交通標識

いつも通る道に見たことの無い看板が立っていた。錆びついて赤茶けた、ひし形をした交通標識のようだ。なんだろう、と思って近づく。錆に侵される前は黄色だったらしい。あまりにもぼろいから見落としていたのだろうかと通り過ぎた。

次の日の朝、いつも通る道に見たことの無い看板が立っていた。錆びついて赤茶けた、ひし形をした交通標識のようだ。なんだろう、と思って近づく。黄色い塗料がわずかにはがれ残っている。あまりにもぼろいから見落としていたのだろうかと通り過ぎた。

次の次の日の朝、いつも通る道に見たことの無い看板が立っていた。錆びついて赤茶けた、ひし形をした交通標識のようだ。なんだろう、と思って近づく。黄色く塗装された、野生動物注意の標識のようだ。肝心の動物のシルエットはかすれてよく見えなかった。

次の次の次の朝、いつも通る道に見たことの無い看板が立っていた。錆びついた、ひし形をした交通標識のようだ。なんだろう、と思って近づく。黄色い地に人型が黒く染めつけられている。なんだろう。

 

 

私は車を降りた。先ほど撥ね飛ばしてしまった人間が横たわっている。かわいそうなことをした。この星の固有種である人間を傷つけたと知れたら社会的に大バッシングを受けそうだ。困ったな。こんなことなら地球に旅行なんてするんじゃなかった。