あめ

あることろに、お菓子が大好きなハナコさんがいました。
ハナコさんはあんまりお菓子が好きすぎて、そればかり食べてはご飯を残すので、お母さんは、
「あんまりお菓子ばかり食べていると、あめ玉になってしまうよ」
と、よくたしなめたものでした。

ある日、ハナコさんは学校のお昼休みに鬼ごっこをしていると、アイタ、と小石につまづいて転んでしまいました。
鬼役だったハナコさんはいそいでひざの砂ぼこりを払って、走り出そうとしました。でも、なんだかおかしいのです。ハナコさんのひざは、粉々にくだけてしまっていました。
校庭の地面には、赤いガラスのような、ハナコさんのかけらが、お昼の日の光をあびてキラキラと光っています。いっしょに遊んでいたみんなはどうしたのかしら、と心配して集まってきました。いつも校庭のかたすみでいっしょうけんめい働いているアリたちもやってきました。
アリたちは、さわぎの真ん中にいるハナコさんを見つけました。そうして、
「これは上等なあめ玉だ」
と、アリの隊長がうれしそうに隊員たちに言いました。アリたちはかれらのお家からぞくぞくとやってきて、さっそく仕事にとりくみ始めました。
おぐしはリコリス、お目目はニッキ、赤い血しおはサクランボ」
アリたちは歌いながらせっせと働きます。ひざがくずれてしまって、砂だらけの地面をはい回ることしかできませんので、ハナコさんはみるみるうちに真っ黒なアリまみれの姿になってしまいました。
「色とりどりの内ぞうは、それぞれおいしいくだもの味。白いお骨は、あら、ハッカ」
ハナコさんは、ちくちくとこそばゆいようなアリたちのあごにこま切れにされてしまいました。そして、とうとう、アリたちが地面をほって作った暗くてじめじめしたお家に、すっかり持ち帰られてしまいました。