タイムパラドクス不審者

こんにちは。

皆さんは過去の自分に会ったらどうしますか?

 

ボルヘスの「砂の本」に、過去の自分に出会ってしまう話がありました。作者自身が主人公として登場するこの話には、多分ちゃんと読めば文学的な美しさとかがあるのだと思います。

それは置いておいて。

過去の自分に会ったボルヘスは、その頃の自分が読んでいない本の一節を暗唱して過去の自分にこれが夢ではないことを教えます。こんな詩は自分では思いつかない、と。

他にもこの話の中で二人はいろいろな会話をするのですが、そのどれもが知的で、私なんかは「はぇ~、難しい……」とアホ面下げて読み進めることしかできませんでした。

さて、ここで疑問が浮かびます。

過去の自分に出会ってしまったらどうしよう。私は私であることを彼に信じさせることができるかどうか。そもそも会話はできるのか。

 

「えーっと、そうだ。その頃ならたしか部活の中で人間関係がうまくいってない……よね」

「あなた、だれですか」

そりゃそうだ。知らない大人が話しかけてきているのだから。ここで「私は未来のあなたです」なんて言おうものなら過去の私は走って逃げる。その頃の私は携帯電話を持っていなかったので、通報も出来ずに恐怖の対象である不審者に愚かにも背を向けて走り出すだろう。私のことなのでよくわかります。

 

いや、それも驕りかもしれませんね。

私は現在の私のこともよく分からない。ましてや、過去の自分のことなんてすっかり忘れてしまっていますので、もうそれは歳の離れた他人でしかありません。

過去の自分に出会ってしまったらどうしたらいいのか。

それは、無視して関わり合いにならない。それが一番無難な選択のはずです。タイムパラドクスも起きない、通報もされない、世界と自分の社会的立場両方に優しい選択です。

 

なんてつまらない結論なのでしょうか。

私も過去の自分と哲学的かつ文学的な会話を繰り広げたいのに!

 

以上です。さようなら。