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先生、先生。聞いてください、助けてください。お願いです。
これはきっと寄生虫に違いありません。私、そういう事を調べるのが好きだから、わかるんです。きっと私の目玉に寄生虫が卵を産み付けたに違いありません。そうでしょう先生、早く助けてください。このままでは操られ鳥に自ら捕食されるカタツムリのように、取殺されてしまいます、助けてください。早く、お願いします。頭が痛むんです。もう卵は孵っているのです、わかりますか。光を当てて観察してください、幼虫が蠢いています、見えないのですか、私の眼球の中に、ふよふよと、忌々しい寄生虫が、我が物顔でのさばっているのがお分かりにならないのですか、先生。こうして、こうして目玉の中を、視線で追いかけるとあざ笑うかのように盲点に隠れてしまいます。ああ、忌々しい、ああ腹立たしい。こうして馬鹿にしておちょくって、宿主の私を苦しめ抜いて、礼儀知らずにも程がある。そうでしょう先生。この虫を追い払ってください。助けてください。頭が痛い。幼虫が、視神経を通して脳みその隙間をうねりのたくっているのですよ。ほら、また目の前を寄生虫めが通り過ぎました。クソっどこにいくんだ。逃げるんじゃない。先生、目を動かしすぎて気持ち悪くなるのもこの寄生虫のせいなんです。両目に麻酔の目薬をして、一思いに切り開いて、私を助けてください。このままでは、この幼虫が大きくなって、目の玉の硝液を吸い尽くして、丸々肥え太り、眼窩から逃げ出してしまいます。こいつらを止めるには今しかありません、先生。私は視力を失ってもいいのです。この寄生虫共の繁殖を食い止めなければ。
先生、先生。聞いていますか、助けてください。お願いです。