反出生主義の本を読んだ(今日発売のやつ)

こんばんは。

頼んでいた本が届きました。『ただしい人類滅亡計画 反出生主義をめぐる物語』です。
インターネットで有名な人が書いた小説とも哲学書ともとれるような本でした。会話劇の形? 進むこの物語は、題名の通り反出生主義を題材にしています。
魔王がやってきて世界を滅ぼそうとするのですが、その滅亡するべき(あるいは滅亡するべきでない)理由を10人の人間の話し合いによって求めようとする、という話です。本編の八割以上が人類が存続にかかわる議論に使われています。10人の登場人物たちはそれぞれがそれこそ十人十色の思想を持っていて、議論はまとまる様子を見せません。
いったいこの結論はどこへ向かうのか期待しながら読みました。議論の内容も、前提に同意できないところはありつつもスピーディーかつ知的で面白かったです。私が納得できなかった前提というのも、私の理解力不足から納得できかねたというだけかもしれないのでまた読み返してみるべきものです。
最終的に魔王が出した結論とは、は内緒です。納得できるものであったのは確かです。ただ、反出生主義をめぐる物語の結末としては、あまり答えになっていないような気もしました。これも読み返して検討したいです。

さまざまな思想に人々が出てくる中で、私が最も共感できた態度は、本当に存在するのはこの私だけであるという立場の人物でした。他の登場人物たちには「〇〇主義者」という紹介があるのですが、その人物だけは「??主義者」となっています。私はそれを唯我主義者なのではないかと思ったのですが、どうなのでしょうか。ちょっと違うのかもしれません。なにせ私は学がないので、それを表す正しい言葉が分からないのです。
それは置いておいて。
我思う、故に我あり。それに反論することのなんと難しいことか。これは私にしか分からない。そして他人から何を言われようと、何かを考える私の存在を私は否定することができない。同じように他人にも自我があると考えることもできるけれど、それを証明することはできない。
また、その「??主義者」は道徳についてこのようなことを言いました。人は道徳を守っているのではなく、道徳の守り方を守っている。
なるほど。完璧に理解したというわけではありませんが、納得できます。
道徳について感じていた違和感のようなものの尻尾をこの考え方でつかむことができました。
読んでよかったです。

小説としては、地の文がないのでどうなのかな、と思うこともありましたが、そんなのは気にならないくらい興味深くおもしろい本でした。
装丁もかわいいのでよかったです。